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【特集】映像ディレクターに聞く、実写映像の強みと弱みとは?・前編

みなさん、こんにちは!
ジーアングル営業部の森です。
本日はジーアングルのチーフ映像ディレクター・新郷に、広告面での【実写映像の強みと弱み】をテーマに、ざっくばらんに語ってもらった特集をお届けします!

映像制作のご依頼でよくお客様が陥っている問題や、映像制作をお仕事とする側としては意外な提案内容など、少し長くはなりますが、お仕事の手を緩めてご覧いただけますと幸いです。

今回はより質問を深掘りできればと思い、私よりも新郷と付き合いが長い、ジーアングル社長室室長の田島にインタビュアーを努めてもらいました。
(結果的に2人のトークが盛り上がりすぎて、記事編集がとっても大変でした……笑)

それでは、前置きが長くなりましたが「映像ディレクターに聞く、実写映像の強みと弱みとは?・前編」をお楽しみくださいませ。

新郷佑太
目次

「あるモノを撮る」映像には実写が明らかに向いています

ーー今日は展示会のお客様向けのインタビューということで。新郷さんは元々は映画制作志望でしたよね。

当時のヒエラルキー的にも、やっぱり映像で何かやるなら映画監督が目指すべき場所……っていう時代でしたよね。今は裾野が広がっていて、Web媒体もありますから、必ずしもそうではないと思いますけど。

ーー前回の展示会ではアニメ表現による映像制作の提案もしましたが、「実写」で何かを表現することのメリットだったり魅力ってどのあたりにあると思いますか?

実写って、そこにある物しか撮れないんですよね、当たり前ですけど(笑)。なので、実際にある物を説明したいとか、操作しているところを見せたいとか、リクルートだったら実際に働いてる職場を見せたいとか、そういう「あるモノを撮る」映像には実写が明らかに向いています。社員インタビューなどを用いて会社の雰囲気を伝えたい、ってパターンはとても多いですから。

ーー制作スピードの面ではどうですか?アニメはやはり制作時間も長く掛かることが多いですよね。

やっぱり時間を掛ければ掛けるだけクオリティは上がるって部分もありますので、制作予算や必要時期に合わせて調整していくってやり方が多いですね。ただ、アニメよりは全体的にスピーディーに制作できるかな。だいたい1ヶ月〜3ヶ月のスパンで制作に当たることが多いです。

ーー制作が長くなるときって、例えばどういう場合なんですか?

企業様の映像だと、ブランディングイメージから構築する場合は時間がかかりますね。特にリクルート映像とかって、クライアントの「色」を出さなきゃいけないじゃないですか。でも、油断するとだいたいどのクライアントも「似た色」になってくるんですよ。明るく正しい職場です、笑顔が溢れる職場です、みたいな……。

ーー映像もオフィスの中で明るく、背景に抜けがあるような構図で撮って。

そうですそうです。それだと逆に企業の個性や「色」って出にくくなっちゃいますよね。似通ってきてしまう。そうならないように、映像手法的にはモチーフを使ったりとか、差別化をできるだけ図っていきます。

ーーそういう場合のモチーフってどんなものを指すんですか?

何かテーマ性のあるデザイン、みたいなものですかね。会社紹介のパンフレットとかにそういうモチーフが登場しているときもあるので、企業様にとってのシンボルのようなものがあれば、積極的に使っていくようにします。

ーーそうするとグラフィックデザインというか、映像だけでなく平面のデザイン要素も重要になってきますよね。

そこまで含めて映像制作かな、とは思いますね。そういう時代になってきてるし、必要だな、と。どんな映像を作るにせよ、コンセプトをクライアントと一緒に考えていくことはとても重要だと考えてます。

新郷佑太02

説明のために映像を使うのはお勧めしていないんです

ーージーアングルの映像制作の強みとかメリットってどのあたりにあると考えてますか?

技術的なことより、ご要望をちゃんとお聞きして取り入れる力とか、丁寧さとか。柔軟な制作体制というところは大事にしたいと思っています。

ーー業界的にはもう随分前から、映像制作にもある種のテンプレート化が進んでいますよね。これこれこんな感じでこれくらいのカット数で撮って●万円で作れますよ、みたいなトレンドがあって。そういう「型」を用意するよりは、お客様のご要望に柔軟に対応していく、というやり方ってことですか?

そうですね。どうしてもご予算にもよってきちゃうんですけど、ジーアングルのスタイルとしてはそうしたい。テンプレートはクライアントにも制作側にも分かりやすくて良いんですが、他と同じモノをお金掛けて作ってもしょうがないじゃん、とも思ってしまうので(笑)。できることなら、他とは違う、一つしかないモノを作品としてご提供したいですよね。

ーーちなみに、最近の実写映像制作のご依頼内容ってどんな傾向のものが多いんですか?

お受けしてる案件が広すぎてなかなか一概に言いづらいんですけど、大きく言うと「サービス紹介」が多いですかね。会社そのもののご紹介よりは、その中で作られている商品やサービスを説明する、というものです。

映像制作サービス一覧
ジーアングルでは多様な映像制作を年間で数百件承っています!

ーーテキストで説明すると量が多すぎて読んでもらえなかったり、分かりづらかったりするものを、映像で図式化して顧客に伝えたい、というご要望は昔から多いですよね。

多いですね。ただ、説明のために映像を使うのは、実はあまりお勧めしてないんですよ。

ーーお、それはなぜですか?

映像ではそんなに詳しいことを説明できないからですね。見た目は確かに分かりやすく見えるんですが、であれば「見た目のわかりやすさを重視した使い方をしましょう」というご提案をします。

ーーマーケティング風に言うと、「理解」や「納得」より「認知」や「関心」に映像を使った方がいい、という。

そうですね。基本的に「理解」には映像は向かない、と思ってやってますね。

ーーそれってWeb向けの映像に特に言えることですか?

うーん、言われてみるとその傾向は強いかもしれないです。商品の説明やサービス内容って、だいたいはHP上に掲載してあるじゃないですか。それと被せてまで映像を作る必要は、僕はないと思っています。本質的に「HPの説明を読みたくなる気持ちにさせる」のが、映像は向いているところだと思うんですよね。映像ってそれでなくてもチェックするのに時間が掛かるメディアですから、説明ばっかりしていてもユーザーが離脱しちゃいますよね。他の映像作品もそうですけど、とにかく説明ばっかりしてる映像っていうのはユーザーからすれば鬱陶しいだけ。なので、具体的な説明をしたいなら文章をお勧めします(笑)。

ーー実際にクライアントに「説明したいなら映像じゃない方がいいですよ」っていう提案をする場合もあるんですか?

ありますあります。だから映像に何を求めるのか、期待するのかってことが重要ですよね。

ーー目的やゴールがどこにあるのか。

ですね。そのゴールのためには「映像じゃないです」っていうケースは当然あるものだと思ってます。効果の期待できないものを作ってもしょうがないんで、ちゃんと言わなきゃいけないことだと思います。

ーーでも、せっかくお金を出して映像を作るんだから、向き不向きはあっても「認知」も「理解」も両方獲得したいよ!っていうのが心情かな、と思うんですけど(笑)。

そういうご要望が非常に多いのは事実です(笑)。それがダメっていうことではもちろんなくて、ちゃんとご説明はして、一番効果の出る戦略を一緒に考えさせていただくのが、この業界のディレクターの大切な仕事ですね。例えば認知用の動画と説明用の動画は分けて、別々に作りませんか?とか、そういうご提案ですよね。これは僕に限らず、ディレクターなら誰でもやってることだと思います。

新郷佑太03

ロケハンはどんな撮影でも、基本はしたいです

ーー受注傾向というか、お客様のご要望で最近よく聞かれる手法とかってどんなものになりますか?

VRかVtuberですね。「Youtuberさんと何かやりたいです」っていうご要望もとても多いですよ。

ーーVRとVtuberはやっぱり流行から来るものでしょうね。なんか面白そうだぞ、なんか流行ってるぞ、的な。Youtuberを起用したいというのは、インフルエンサーとしての機能を期待されてるんですかね?

まだまだ世間的には未開拓のジャンルなので、安価で起用できるんじゃないか?でも若者層にはすごい影響力があるんじゃないか?VRは技術的に今後伸びそうじゃないか?といったような、手探りでの期待感が強いんだと思います。あとはジーアングルはアニメ制作も承れるので、アニメで自社PRをしたい、というご要望もやっぱり多いですよね。これは僕らの得意な手法でもあるので、インフルエンサーをキャスティングするより、アニメのインパクトや声優さんのネームバリューなどをプッシュさせていただくことも多いです。

ーーアニメでのPR映像制作の強みについては別インタビューでご説明するとして、例えば商品やサービスの「説明」の映像を実写で作る場合、どのような工程を踏むんですか?

まずお打ち合わせで、撮影対象がどんな商品・サービスなのかをしっかりヒアリングします。資料をもらうのは当然として、わからない所は質問させていただいて。その中で、クライアントが感じているメリットと、ユーザーが感じるメリットがすれ違っているときもあったりするので、そこのすり合わせに気をつけますよね。「僕が感じるこの商品の良い所ってこういう所だと思ったんですけど、どうですか?こういう所は打ち出してもいいですか?」みたいな打ち合わせをして、台本を作っていくイメージです。

ーーとはいえ、発注する側の気持ちで考えると「いやいやユーザーさんはそう言いますけど、僕らとしてはココを押したいんですよね」みたいな、開発者さんサイドのこだわりって絶対あるじゃないですか。ここはぜひ知ってほしい、ここはどうしてもドヤりたい、みたいな。

基本はそういうこだわりポイントを見せていくことにはなるんですけど、ユーザー目線で良い!と思える箇所も必ずご指摘というか、ご提案はしますよ。ユーザー目線で見たときにどうかな?という客観性は、依頼される制作者サイドだからこそ持てる武器かなぁとも思います。

ーー台本構成が固まってからのステップはどうなるんですか?

実写であれば、撮影の工程に入ります。撮影日をまず決めて。……ただ、サービス紹介の映像とかって、絵コンテを事前に切っても現場で変わっちゃうことが多いんですよね。なので、やっぱりロケハンはさせていただきたいんですよ。

映像制作の基本的な流れ

ーーロケハンをするかしないかを決めるのって、撮るモノですか?予算ですか?

ロケハンはどんな撮影でも基本はしたいです。もちろん予算や日程の都合で制限されちゃうことも多いんですけど。

ーー例えば地方のクライアントで、なかなかロケハンには行けず、撮影日当日に場当たりで撮るしかないときもありますもんね。

そういうときはもう、その場の判断でやるしかないですよね(笑)。事前に想定していた環境とは違っていて、用意していた機材では撮影が難しい場合なんかもあります。ただ撮影自体が全くできない、ということはまずないんです。ないけど、映像制作者として求めたいクオリティには仕上がらないケースも正直ある。ただ、ロケハンをしたからビュー数が何万回伸びる、ということとはまた違うので……(笑)。そこは難しいところですよね。

ーー可能であれば予算や日程面で、ロケハンができる余裕を見てもらった方が、映像としては綺麗なものに仕上がりますよ、ということですね。

間違いなく綺麗には撮れると思います。映像そのものとしては、必ず良いものになるはずですね。

ーー実際に映像を撮って来てからの作業や流れはどうなりますか?

基本的には台本に沿った形で編集していきます。だいたい1週間くらいお時間をいただいて、初稿を見ていただく、という流れになるかと思います。僕らの場合ですと、初稿の時点で7割くらいは完成データに近づいています。だいたい残りの3割をクライアントと一緒に微調整していくような形ですね。

「なぜ映像を作りたいんですか?」という質問は必ずします

ーーあとは制作手法についてなんですけど、例えばナレーションを入れた方がいい場合って、どんなときですか?

やっぱり「説明」を多く入れたい場合は、ナレーションを入れた方がスムーズに伝わりますよね。テロップだけだと入れられる情報量も限られますし、ユーザーさんもそんなに読んでくれないですから。

ーーナレーションの有無で動画の離脱率がこれだけ違う、みたいなデータはあったりするんですか?

無いわけではないのですが、離脱率に関して言えばナレーションの有無ではなく、映像の冒頭6秒くらいが全てじゃないですかね。Youtubeの広告仕様にもよりますけど、Web向けの動画に関して言えば、映像のド頭がかなり重要になりますね。

ーーYoutube広告やTwitterでの拡散のことを考えるなら、どうしたって冒頭が最重要でしょうね。よほど影響力のある方をキャスティングできればまた別でしょうけど。

これも映像の用途次第で、興味の無い人に興味を持たせよう、というようなことを目的とするのであれば、やはり冒頭のインパクトやキャスティングはかなり大切ですよね。逆に、黙っていても見てくれるような映像であれば、淡々と「説明」を入れてしまってもいいと思うんですよ。このあたりもしっかり打ち合わせの中で、方向性を固めていってます。

ーー最近の映像制作で「これはうまくいった」みたいなプロジェクトはありましたか?

とある観光業の企業説明映像は良かったですね。4〜5ヶ月かけて作ったんですけど、クライアントのやりたいことしっかりと実現できたというか。先方もすごい協力してくださったんですよね。イチ押しのツアーに同行させていただいたり。

ーーあ、その場で撮影しちゃおう、みたいな。

いえ、「まずはツアーを体験してください」と言っていただけて。

ーーそれはすごい!じゃあまさにロケハンとして、一度ツアーを体験できたんですね。贅沢だなぁ(笑)。

そうなんです。すごく協力体制を敷いていただけて。何よりクライアントのことをよく知れましたよね。そうすると新しい発見もいっぱいあって。「あぁこういう取り組みもしてるんだ、こういう理念で働いているんだ、だったらこういう点は映像の中でも大切にしないとな」っていう要素をいっぱい知ることができるんですよ。その上で制作に入れると、作品の深みが全然違ってくると思います。「ちゃんと現場を知っていただいて、あとはお任せしますよ」っていう、すごく懐の深いプロジェクトでした。参加できて光栄でしたし、良い作品を残せたと思っています。

ーー逆に、こういう制作はちょっとキツかったな、みたいなケースはあるんですか?

コンセプトがコロコロ変わるとキツいですね(笑)。「映像で何かをやる」ということだけが先行してしまっていると、作っても「やっぱりあっちの方向で……」みたいなことになりやすいんですよ。だから「何のために作っているのか」はとても大事です。ただどの企業様でも、トップの方はきっちりコンセプトを持ってるんですよね。

ーーご担当者さんのところに、うまく共有できてないだけで。

ですね。いざ出来上がったものを見てもらうと、こうじゃないでしょ、となってしまうんでしょうね。ただよくあることではあるので、お互いに時間を大切に使えるように、僕は必ず「なぜ映像を作りたいんですか?」というご質問をしますね。他の手法が最適な場合は「映像じゃないと思います」というご提案も躊躇なくするようにしています。

新郷佑太04

長いインタビューにお付き合いいただきありがとうございました。
映像制作の特集なのに、前半一度も動画が出てこないという驚きの構成ですがお楽しみいただけておりますと幸いです。

普段なかなか聞くことのない映像ディレクターという立場からの制作に関するこだわりなど
個人的にはとっても興味深くインタビューに参加いたしましたが、読んでいただいた皆様はいかがでしたでしょうか。

前半ではご紹介できなかった、最近感銘を受けたミュージックビデオや今後のビジョンを語る、後編「どうすれば他と違うモノになるかを考える」に続きます!
後半は動画も盛りだくさんでお送りいたします。ぜひこちらもご覧くださいませ。

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