作家(作曲家)が楽曲を制作する際、一度プロのボーカリストに入れてもらう歌のことを「仮歌」と呼びます。
特に、英語の歌を制作する場合には、ことさら仮歌を入れることに大きなメリットがあるといわれています。
今回は、英語ソングの制作で本番レコーディングの前に仮歌を入れておくことのメリットについてご紹介します。
【メリット1】英語の発音を歌手に伝えられる
英語ソングを担当する本番のシンガーが日本人の場合、英語の発音にたけている場合はそれほど多くはないでしょう。
しかし、壮大なバラードや切ないラブソングなどのように歌を聴かせる楽曲の場合、作家が意図している英語の発音や歌い方と本番のテイクが違っていると、楽曲自体が完成しません。
そこで英語が話せる、もしくは歌えるボーカリストに仮歌を入れてもらうことで、正しい発音を本番の歌手に理解してもらい、きちんと聴き手に「通じる」英語ソングとしての完成度を高められるのです。
仮歌が正確な発音の英語で歌われていれば、本番のシンガーがレコーディングまでに音源を聴き込んで発音を近づけることができます。
その結果、より「聴きやすい英語ソング」や「歌詞が伝わる英語ソング」の実現に近づけられます。
【メリット2】強弱など、歌の「聴かせどころ」を歌手に把握させられる
作家には、思い描いているアクセントや強弱、あるいは表現のポイントなどがあります。
それらを本番のボーカリストに直接伝えることも大切ですが、サンプルとして曲に求められる表現をきちんと盛り込んだ仮歌があれば、レコーディングがスムーズに進むでしょう。
事前に仮歌を聴き込む時間がある場合とない場合では、楽曲に合った表現方法やレコーディングにおける再現性、楽曲そのものの出来栄えにもかなり差がつきます。
【メリット3】作曲コンペで耳にとまりやすくなる
作曲コンペなど、曲を公募で決めてから歌詞を付けてリリースする場合も、仮歌が必要になります。
コンペに提出する際も、ボーカルのメロディー部分をシンセサイザーの単音やボーカロイドなどで代用するのではなく、ボーカリストに仮歌を入れてもらうのが一般的です。
まだ本歌詞が付いていない状態で納める楽曲であっても、英語などで仮の詞が付けられた状態で生の歌声を聴くことができれば、歌の主人公や全体のイメージを把握しやすくなります。
コンペの場合は、あまり歌い方のクセが強いボーカリストよりは、仮歌入れの経験が豊富で「仮歌として聴かせる能力」にたけた歌手に依頼する方が無難でしょう。
また、本番で歌う方が男性なのか女性なのかが分かっていれば、同性の声で仮歌を入れた方が選ぶ側に対して説得力を与えられます。
余談ですが、本番を歌う方が未定の状態でコンペが行われ、仮歌が審査の段階で高評価を得られた場合、仮歌のボーカリストが本採用されるというケースもあります。
おわりに
今回は、英語ソングの制作で仮歌を入れることのメリットについてご紹介しました。
実際に、仮歌入れを職業の一環としているプロのボーカリストも少なくなく、作家や制作サイドが彼らに直接歌唱を依頼できる窓口なども今ではネット上などに豊富に設けられています。
英語ソングを依頼したい場合にも、依頼時に英語の歌が得意かなどを確認しておいてください。
制作会社の中には、ネイティブの歌手が在籍している場合もあります。英語の発音に関しては最も信頼できるため、積極的に利用しても良いでしょう。
しっかり歌を伝える実力を持った歌手に依頼し、曲の魅力をより正確に伝えるために仮歌のレコーディングは非常に重要なのです。
■ 仮歌が完成したら次は本番レコーディング!本番レコーディングについてはこちらの記事をチェック!